クシャミを1つして、寒さに身を震わせる。今日はこんなにも冷える日だったか。寝起きの頭は回らずに、そんな事はどうでもいいと布団をたぐり寄せる。・・・こんなにも自分の家の布団は、薄っぺらな物だっただろうか。それに部屋の空気が違う。匂いも違う。知らない匂い・・・・・・昨日は誰かの家に止まった記憶はない。
やっと覚醒してきた脳を回転させつつ、俺は重たい目蓋を開けた。まだ眠っていたいという欲望はあるが、今は呑気に眠っていられない。
「ここは・・・・」
上半身を起こすと身体に掛かっていた布団がめくれた。やはり見知らぬ布団だ。周りを見渡すとアパートの一室のようで、お世辞にも広いとは言えない。家具を見るかぎり男の部屋だろうが、意外にも綺麗に片づいている。壁には何故か車のエンブレムがかけられていた。
「・・・うぅ・・・・」
「?」
少し離れた所から呻き声が聞こえ、視線を移すと髪が長めの男が床に転がっていた。どうやら布団は今自分が寝ている物しかなく、多分この部屋の住民であろう男は硬い床で寝るしかなかったようだ。
「(・・・俺、この人に拾われた・・・・・・?)」
だが昨日は確かに借りていた部屋で寝ていたはず・・・外などで寝ない限り、拾われてここまで運ばれる事なんて無いはずだ。
かなり不思議に思ったが、とりあえず身体がベタベタするからシャワーを借りる事にした。熟睡している様子を見れば、まだまだ起きるのは後そうだ。
「(話を聞くのはそれからでも遅くない・・・)」
「ぅ・・・ん・・・・」
ほのかに香る自分とは違う煙草の香り。眠りから覚めたくないカイジは嫌そうに寝返りをするが、身体の節々が痛む。
そっか、俺床で寝てたから・・・・・・・
「っ・・・そうだった!」
ガバリと身体を起こし、煙草の匂いを辿ると彼が居た。カイジが自分の部屋まで運んだ白銀の髪を持つ謎の少年だ。少年は突然起きあがったカイジを見ると、口に銜えていた煙草を灰皿へと押しつける。そしてじっとカイジを見た。
カイジはカイジでまだ寝ぼけてはいたが、その少年を見つめ返す。
「ねぇ、俺を拾った人だよね?」
「拾・・・・?ばっ馬鹿!!拾っただとか・・・そんな犯罪紛いな事をするわけがないだろうがっ・・・・!」
「じゃあ違うの?」
「当たり前だろっ!俺は雨の中、お前がアパート前に倒れているから、仕方なく部屋に運んでやったんだぞっ・・・!なのにその言いようはないだろっ・・・・・!」
「そう・・・でも可笑しい・・・昨日は部屋で寝てたはず・・・・っ?!」
突然少年は壁に掛かっていたカレンダーを見て、驚いたように目を見開いた。カイジは不思議に思って首を傾げる。何も不思議な点はないはずだ。
「カレンダーがどうかしたのか?」
「・・・・今って、平成っていうの・・・?」
「なっ、何を当たり前な事を「俺、昭和から来ちゃったみたい」・・・は?」
カイジがぽかーんと固まっていると、少年ははぁ・・・と溜息をついた。
「・・・そういうわけだから、俺をここに置いて貰えると嬉しいんだけど」
「え、ちょ・・・待て!昭和から来た・・・?なんでそんな事っ・・・」
「嘘だと思うの?」
「当たり前だろ・・・!非現実すぎるっ」
「そんな事言われてもな・・・・・・証明する物もないし。・・・ん?」
「っ・・・人の指、そんなに見るなよ・・・!」
カイジはさっと左腕を背に隠す。まだ傷口は癒えていなく、しっかりと指を切り離した後が残っているのだ。
それを見た少年はニタリと口角を持ち上げた。
「堅気に戻ったの?それとも博打?」
「っ・・・・」
「・・・まぁどっちでもいいや。ねぇ、俺とギャンブルしようよ」
「ギャンブル・・・?」
「それで俺が勝ったらここに泊めて。アンタが勝てば俺は出て行くからさ」
「出て行くって・・・お前行く所あるのかよ?」
「ククッ・・・・そんなの、作ればいい」
さぁ、何で勝負する?と問い掛ける少年を見て、カイジはムッと眉を寄せた。それを見て今度は少年が首を傾げる。
「やらないの・・・?」
「自分を大切にしないのか?行くあてを作るっていうのは・・・その・・・」
「俺、顔が良いことは自覚してるからさ」
「っ!!」
その言葉を聞いた途端、カイジはガッと少年の胸元を掴んだ。少年はまさかそんな反応をされるとは思っていなかったのか、ひどく驚いた表情を浮かべている。カイジの顔はと言えば、泣きそうなほど悲しげな表情だ。
「(・・・何かまずい事言ったかな・・・)」
「なんで・・・自分を大切にしないんだ・・・?お前、まだ高校生くらいだろっ!もっと自分を大切にしろよ!!」
「・・・・・。」
今まで言われた事のない台詞を言われ少年はひどく戸惑う。
起きたときから持っていた警戒心が少しだけ薄れた。
「・・・な?投げやりになんてなるなよっ・・・!」
「ふぅ・・・・分かったよ。じゃあ、アンタの部屋に泊めてくれるよね?」
「えっ・・・・・」
「まさかお説教しておいて、外に放り出してバイバイじゃないよね・・・?」
「わっわかったから!泊まっていいから!!」
「ククッ・・・」
なんだか口車に乗せられた気分のカイジだったが、しかしこの少年に口で勝てる気がしなかったので何も言わないでおく。
「お前・・・名前は?」
「ん?知りたいの・・・?」
「これから一緒に生活するのに名前知らないんじゃ困るだろうが!・・・俺は伊藤開司」
「カイジさん・・・ね。俺は赤木しげるだよ。」
「ん、よろしく」
カイジが右手を差し伸べると、赤木は疑問符を頭に浮かべる。それを見てカイジは無理矢理アカギの右手を取った。
「握手だ!」
「・・・握手なんて初めてしたかも」
「お前一体どんな生活してたんだよ」
こうして正体不明の少年赤木しげると、伊藤カイジの生活は始まった。
「ちなみにカイジさん、俺高校生じゃないからね。13歳だし」
「じゅっ……えぇ?!」
アパート全体に響くような声で「嘘だろ?!詐欺っ・・・・!」という叫びが、陽射し眩しい朝の空に響き渡った。
ぐだぐだとよく分からない感じで長文になってしまった・・・
読みにくくてすいません(焼き土下座
とりあえず出逢えたので、次の話からは生活のお話です。・・・ど、どんな生活風景を書けばいいんだっ・・・!!