01. Mysterious boy

正直ついてない日だと思った。本当に運がないっ・・・!

新台が入荷したと聞いて訪れたパチンコで持ち金を全て使い、素寒貧になってしまったのに、こういう日に限って家に食料がなかったりする。
しょうがないのでいったん家に戻り、埃を被った貯金箱の中身を確認した。3000円ほどしか入っていなかったが、今のカイジには有り難いお金だ。
そのお金を再びパチンコに使うのではなく、給料日までの食費に費やそうと近場のスーパーに来て食料を買った。安売りしていたインスタント類、そして少しの野菜とお酒だ。再び寒くなった財布の中身に溜息をつきつつ、スーパーから出れば降り出した雨。本当についてない!

「くそっ・・・!」

ガサガサとスーパーの袋を鳴らしながら小走りで家へと急ぐ。近場のスーパーに来たと言っても、それなりに距離はある。だんだんと水分を含んで肌に張り付く服に眉を寄せた。傘を持ってくればこんな事には・・・!後悔、先に立たず・・・だ。

「・・・・・?」

走り続けて数分、やっと自分の住むアパートが見えてきた。しかしそのアパート前の電柱に、何かがある。全体的に真っ白だが、黒い部分も見える。ゴミ袋ではなさそうだ。

「(人・・・間・・・?!)」

アパート前まで来て、その物体をよく見てみる。それは確かに青年だった。人間とわかった瞬間、それが死体に見えてきてゾッとしたが、微かに息をしているのに気づきホッとする。
何故こんな所に倒れているのだろうかと思ったが、カイジはぶんぶんと頭を振った。

考えちゃ駄目だ・・・!これは赤の他人っ・・・他人なんだから・・・

お人好しな性格故に、今まで色々な痛い目にあってきた。もしこの倒れているのが演技で、俺が家に入れた瞬間に金を出せと脅してきたら・・・?
無論金はないから出せない。それに逆上して殺されでもしたら、とんでもない。

「(無視だ・・・無視するのが1番・・・・・)」

そう考えてカイジはさっさと階段を上がって自分の部屋へと入った。スーパーの袋をテーブルの上に置き、バスタオルで自分の頭を吹く。窓から外を見てみると、どこまでも雨雲が広がっていて雨が止む様子はない。

「だから・・・なんだっていうんだ・・・・!」

一層雨音が激しくなった気がした。カイジが頭をガシガシと掻くと、急いでドアを開ける。通路からアパート前を見ると、まだ青年は倒れていた。お人好しなのはわかっている。倒れている彼にとっては大きなお世話かもしれない。でも・・・。

「(ほっとけるわけがないっ・・・!)」

再び濡れるのも構わずカイジは外へ出た。倒れている青年に近付き、頬を叩く。反応はないようだ。しかたないので青年の片腕を自分の肩にまわし、引きずるように階段を登った。案外青年は身長があり、お姫様抱っこなどで運べなかったのだ。これは俺が悪いんじゃない・・・倒れてるこいつが悪いんだ・・・!
荒い息を吐きながらやっと自分の部屋まで運んだカイジは、青年を部屋に寝かせる。バスタオルで簡単に拭いてやり、びしょ濡れの服を脱がせて洗濯籠へ放り込む。代わりに自分のスウェットを着せてやり、1つしかない布団へと寝かせた。

「なんでこんな雨の中・・・倒れてたんだ・・・・・?」

よく見れば青年の顔は非常に整っており、髪の毛は純白だ。こんな青年はここら辺で見た事がない。着ていた洋服は制服で、多分学生・・・

「高校生・・・?んー・・・でもなんか・・・」

雰囲気が、他の人と違う。
どっちにしろ大きな拾い物をしてしまったと溜息をついた。

「本当に・・・ついてない・・・」

始めてしまったアカカイ連載です。うーん…ちゃんと完結させられるのか不明ですが、出来るところまで頑張っていきたいっ・・・・・!