※ 学パロ


「涯くん、涯くん!」


俺が名前を呼んだら、不機嫌そうにこっちを向いた。
でも俺は知ってる。本当は涯君は嫌がってない。嫌よ嫌よも好きのうちっていうし、涯君が本当に俺を嫌いなら振り向いたりしない。


「涯くん、一緒に帰ろうよ」
「俺は今から掃除だから・・・」
「じゃあ待ってる」
「おい、」
「いいでしょ?邪魔はしないからさ」


本当、本当だって!と念を押したら、涯くんは諦めたように手にしていたモップを床へ滑らせる。
俺はそれをただ見ている・・・・・


・・・・だけなんて、やっぱ出来ないや


「俺、ここの雑巾がけやってあげるよ!」
「掃くだけだからいい・・・・っておい零?!」
「あっ、バケツ倒しちゃた★」
「倒しちゃったじゃないだろ・・・!これ!!廊下水浸しっ・・・!!」


わなわなと震える指で濡れる廊下を指さして、俺を見る涯くん。でも俺は知ってる。本当に涯くんが怒ってるなら、俺を殴るはずだから。それに・・・いつも他人に興味がなくて、遠くを見ている涯くんが・・・今は俺を見てくれている。綺麗で切れ長くて鋭い涯くんの瞳に、俺だけが映ってる。


「ったく、仕事増えただろ・・・」
「いいじゃん、涯くんと一緒に居る時間増えたしー」
「・・・・はぁ」


溜息をついて俺から視線を外し、涯君は床を見る。涯くんの視界を独占しているのは俺が汚した床。俺じゃ・・・ない。思わず伸びた腕は涯くんの腕をつかんで、突然の俺の行動に涯くんは驚いてこちらを見る。あぁ、また涯くんの瞳が俺で一杯になった。


「・・・俺以外、なくなっちゃえばいいのに」
「え・・・?」


そしたら涯くんは俺しか見るものがないでしょ


「ちょ、零・・・・?」
「ん?どうしたの涯くん、早く掃除しちゃおうよ!」
「いや・・・そうじゃなくて、さっきのどういう・・・」
「何か俺言ったかな?涯くん耳わるーい」
「な!お、お前なあ・・・・!」
「ほらほら、怒る暇があったら掃除掃除ー」
「これも元はと言えばお前が水を零したからで・・・」
「掃除終わったら俺の家来るよね?いいお菓子あるんだ!」
「いや、俺洗濯物仕舞わないと・・・」
「来るよね?」
「・・・・あぁ、行くよ。ならお前も早く掃除手伝え!!」


俺を怒りながらもどこか納得いってない表情。
でもそれでいいんだ。今はそれでいい。何を言ってるのかわからないっていう、冗談にも満たないような訳のわからない発言と思っていてくれて構わないんだよ涯くん。



冗談に混ぜ込んだ本気



でも答えは教えてあげない、自分で答えを見つけてよ




零のキャラがつかめていない感がかなり出てます。零は涯くんが好きだって話。