微妙に肌寒くなってきたこの季節。小さく身震いをして両腕をさする。外にあるゴミ捨て場に、ゴミ袋を乱暴に突っ込んだ後急いでコンビニの中へ戻る。まだ早い気がしないでもないが、コンビニでは既に暖房を入れていて暖かかった。
「(あー・・・暖かい・・・)」
「カイジさん顔が緩んでますよ?」
「っ・・・佐原、顔が近い・・・!離れろ!」
「うわっ!ちょ、カイジさんそんなに拒絶しなくてもいいじゃないッスかぁ」
突き飛ばされるようにして離れた佐原は、嫌な顔をするわけでもなく嬉しそうに笑っていた。俺を見てそんなにニヤニヤ笑うなっ・・・!
俺はすぐに佐原から視線を外して、人の居ない店内を見る。BGMだけが流れるこの静かな店内・・・やはり深夜帯が一番楽だ。
「カーイージーさーん」
「・・・・・。」
「カイジさんってば」
「・・・・・。」
俺の右でしつこく佐原が名前を呼んでくるが無視・・・どうせ大した用件でもないだろう。
何も話さずにじっと立っていると、やはり心地よくなってくる。立ったままでも眠れそうなほどだ。
「・・・・・っ?!」
お尻にあたった感触にハッとして振り返る。そこにあったのは佐原の手で、ジロッと佐原を見れば驚いた表情を浮かべていた。
なんで自分で触っておいて、そんな表情をするんだ・・・!
「佐原・・・!」
「わっ・・・す、すいません!伸びしようとしたら、偶然当たっちゃったんスよ!」
「なんで伸びして俺のケツに手が伸びてくるんだっ!」
「斜め下に伸びしてたんですよ!悪気はないです・・・!」
「斜め下に伸びってなんだよ!!変なポーズだろうがっ・・・!」
「カイジさんもやってみてくださいよ!気持ちいいですから」
やれば気持ちいいとわかる。ケツの方へ手が伸びてしまうのも納得できる。しつこく佐原が訴えてくるので、少しやってみた。(・・・確かに気持ち良かった・・・・)
だがもうそれをここでするなと釘をさし、俺は壁に掛かっている時計を見た。まだバイト交代まであと数時間ある。はぁ・・・と溜息を溜息をつくと、少しだけ瞳を閉じた。
深夜のコンビニが混む事もなければ、滅多に人が来る事もない。少しだけ・・・少しだけなら、眠ってしまっても・・・。
「(・・・いや、眠っちゃ駄目だろ俺・・・でも目が開けてられない・・・)」
「カイジさん・・・?」
「・・・・・・。」
「・・・・・・寝ているカイジさんが悪いんスからね」
「・・・・っ!!さーはーらーっ・・・・!!!」
「わわっ!カイジさん起きてたんですか?」
再びシリに来た感触に驚き、それを掴むと佐原の手があった。
佐原はと言えば、やはり驚いた表情を浮かべていて(だが、それは俺が寝ていると思ったからだ)、すぐにへへっと笑みを浮かべた。
「やだな〜カイジさん。これは偶ぜ「のわけあるかっ!!セクハラだろうがっ!!」
「人聞きの悪い・・・スキンシップと言って下さい!」
「馬鹿っ!」
お前嫌い今日俺ん家来るなよ!と言えば、「それは酷いッスよカイジさーん」という情けない声がコンビニに響いた。
偶然の言い訳は二回まで
つまらないコンビニの中で、佐原はしょっちゅうカイジに手を出してればいい。1回目は許すけど、2回目にはカイジだって怒ります。でもきっと後で許すんだろうなぁ