※ シリアス → 微ギャグ
「ねぇカイジさん、もし俺がカイジさんより先に死んだらどうする?」
「……唐突だな」
和也の突然の問いに驚きながらも、カイジはうーんと唸った。
脳内では答えがすでに出ている。だが、なかなか口に出しては言いにくい。
「カイジさん」
急かすように名前を呼ぶから、思わず俺は声に出してしまう。
「ありえねーだろ。絶対に俺の方が先に死ぬに決まってる」
「…ギャンブルしてるから?」
「…………。お前が、俺より若いから」
俺の答えを聞くと、ムスッと表情を変えた和也が背中から俺にのし掛かってくる。
重いって…身体痛いんだから少しは体重かけるの加減しろ!
「和也ッ……」
「そんなのわからないじゃん。俺がカイジさんより若くても、交通事故とか暗殺とかさー……そういうのあれば、カイジさんより先に死ぬじゃん」
「………。」
「カイジさんがさ、自分が先に死んじゃうって思うのは、やっぱり博打をしてるからでしょ」
「…………。」
俺がやめろって言っても、きっとやめないんだろうね。
和也が囁くように言うと、カイジは困ったように頬を掻いた。まさにその通りだ。
抜け出せないギャンブルの世界。極限まで追い込まれるあの緊張感、リアルに死を感じる恐怖感。それを1度体験してしまったのだ。普通の人ならばもう博打などやりたくないと思うだろう。しかしカイジは違う……そこに生まれる博打ならではの快感………圧倒的悦楽……それを身を持って知ってしまったから。だから抜け出せるわけがないのだ。……例え、これからやるギャンブルが、どれほど危険なものであったとしても。
「カイジさんが死ぬ前に俺、死にたいな」
「え……なんでだよ?」
「俺すっごくカイジさんが好きなんだけど知ってる?」
「さっ………さえずるな……!恥ずかしいだろうがっ…!」
顔を真っ赤に染め上げるカイジさんを、後ろから抱き締めるとその首元に顔をうずめる。カイジさんの使ってるシャンプーの匂いが鼻を掠めた。きっと安物のシャンプーなんだろうけど、カイジさんの匂いだから落ち着く。
「俺、カイジさんがいないと駄目になっちゃうと思うんだよね」
「は……?」
「詰まらない毎日がさ、カイジさんと出会ってから楽しくなったんだぜ?今まで俺の周りに居たやつらとは全く違うタイプ……」
「そんなの…どこにでもいる」
「いない」
力を込めてカイジを抱き締めると、カイジが苦しそうに腕の中でもがいた。だか腕の力を緩める気はおきない。
「こんな風に他人を思う事なんて…カイジさん以外にいない。カイジさんが居なくなったら、俺はまた詰まらない毎日をただ送るだけの生活に戻っちまう。」
「和也………」
「だからさ、俺より後に死んでくれよな?俺、死ぬときはカイジさんの腕の中で死にたいな」
いつの間にかもがくのを止めていたカイジは、上半身の体重をゆったりと和也にかけていた。その表情は嬉しそうであるが、同時に悲しそうであって和也は眉を寄せてしまう。カイジさんの答えはYesじゃない。
「和也、俺もお前と同じように思ってるんだ………知ってたか?」
「カイジさん……」
「もー…やめやめ!こんな昼間にするような話じゃねぇよ。こんな暗い話……するもんじゃねぇ」
「……うん、そうだね」
「ってちょ、和也!なんでお前っ…俺を押し倒してるんだよ!」
「カカカ!だってカイジさん、嬉しいこと言ってくれたんだもん。『和也、俺もお前と同じように思ってるんだ…』とかさ」
「うわぁああ!!やめろっ!!恥ずかしいだろうがっ…!」
「録音しておけばよかったかなー 惜しい」
「馬鹿か!っておい、ズボンのチャックさげるな!ぁっ……ま、ほ……本当に…!!今真っ昼間って事わかってんのか?!」
息を切らせながら叫ぶように言うカイジに向かって、和也は綺麗な歯並びを小さく光らせた。その笑みにカイジは青ざめる。
「今更だなぁ。時間帯なんていっつも関係ねぇだろ?」
「いやだぁああああ!!!!」
たとえば、そんな日々
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